温存か全摘か。泣くほど迷った。迷える有難さと不安。
乳がんサバイバー てんとう虫です。
昨日の記事では、婦人科検査から治験参加を決めるまで約2ヶ月の出来事について触れました。
自分で読み返してみると、手には汗。胸の下からもタラタラ汗が。(左胸は放射線あててるので汗が出ず、その分胸の下からたくさん出る)
今回は、術前化学療法後の手術選択について振り返ってみたいと思います。
この記事も汗だくだく、間違いない。
(昨日の記事はこちらをクリック↓)
■■■ 目 次 ■■■
- 温存か全摘(切除)か、乳腺外科医の説明と最初の選択
- しこりが消えた
- 全摘でなくていいのか?手術直前になって迷い始める
- 今更だけど、トリプルネガティブってことで遺伝性乳がんが気になりはじめる
- 「なにが不安ですか?」乳腺外科医の言葉
- 私の選択。正しかったかどうか
- おわりに
※画像は Pixabayの無料写真からお借りしています。
温存か全摘(切除)か、乳腺外科医の説明と最初の選択
トリプルネガティブ乳がん、ステージⅡaかb(リンパ節生検で転移があればb)との診断がつき、治療内容決定に際して乳腺外科医から、
・術前化学療法だと、抗がん剤の効きを見られるメリットがある
・術前化学療法+温存手術と、全摘手術とでは生存率に大きな差はない
・全摘手術でも、胸壁に再発する場合もある
・全摘手術による副作用について
との説明を受け、私は夫とも相談し「術前化学療法+温存手術」を選択。
(※あくまで私のケース。意思決定は担当医と相談を)
この時、かなり家族歴についても聞かれる。
この時遺伝外来を受けるか聞かれたが、あまりよく分かっておらず受けず。(これが後々、迷いの元に。)
術前化学療法(抗がん剤)と、治験が始まった。
※温存手術を選べるには条件があり。詳しくは↓
しこりが消えた
治療開始して約3ヶ月。
ふと患部を触ってみたら、しこりがない。
抗がん剤と治験は乳腺内科医が担当医で、触診してもらうと確かにないとのこと。
電子カルテに「0*0」と入力される。
この時、「カルボプラチンの効果かねぇ」と担当医から言われる。(断定はされない)
※カルボプラチンについては下記記事 目次「運命を分けたかも?」をクリック
全摘でなくていいのか?手術直前になって迷い始める
術前化学療法が進んでいくと、ネットで中途半端に得た情報でいわゆる「情報過多状態」に。
温存手術後再発したブログなどを見すぎて、やっぱり全摘した方がいいのでは?と迷い始める 。
かと言って、全摘手術後反対側に再発、転移している人もいる。
全摘したから絶対再発も転移もしないわけではない。
リンパ浮腫で苦しんでいる人もいる。
結局再発率・生存率なんて、一個人で考えたらゼロか百か。
その間の数字なんて、確率でしかないから意味がない。
そんな考えがグルグル、出口のないまま渦巻いていた。
考えても答えがないことを考えないといけない。
抗がん剤も回数が重なってきてだるさMAX。文字を追うのも出来なくなった。がん本も読めない。韓ドラとお笑いばかり観て現実逃避の日々。
今更だけど、トリプルネガティブってことで遺伝性乳がんが気になりはじめる
最初に受けなかった遺伝カウンセリング外来。
乳がんの中でも最高に予後が悪いと言われるトリプルネガティブ。
遺伝性だと再発率も高い。
遺伝検査をした方がよいのか?娘は?
寝付けない、夜中に何度も目が覚める・・・心身ともに限界。
「なにが不安ですか?」乳腺外科医の言葉
手術を担当する乳腺外科医は乳がん診断告知の時と同じ女性医師。(担当医ということになる)
簡潔的な表現をする人で、告知も淡泊、説明も淡泊。
ただ、今まで見てきた医師の中では、イライラをぶつけてくる女性医師、明らかに男尊女卑(子供の大怪我でかかった医師は、説明時に夫しかみない)医師など、サイテーな医師にもたくさん当たった中で、説明が分かりやすく理論的である彼女の私の評価は悪くない。
そんな彼女に全摘か温存か迷っていると伝えると 、「なにが不安ですか?」
この問題にはこう、こちらの問題にはこう、とテキパキな説明におなか一杯。
テキパキさって冷静すぎて冷たく感じませんか?
待ち時間問題のある大病院で、優しく丁寧な診察は難しいのだろうけど、患者のメンタルも治療に必要な事では?
でも、きっとこの医師は「メンタルだったら専門じゃないんで精神腫瘍科で」とか言いそうだ。
専門じゃなくても、寄り添うことは出来るのではないだろうか。
私はこの時、「不安で当たり前だよ」って寄り添ってくれる人(一般人でなく医療関係者)が必要だった。
医師の存在意味って、もちろん病気を治すこと。これが第一だけど、正解がひとつではない決断をする上で、「迷って当然だよ。でも私を信じて任せて」という寄り添いとリーダーシップを見せてくれる医師に自分の身体を任せたいし、ついていきたいのだ。
それは、いくら夫に「不安だよね」と肩を抱いてもらっても解決しない。別問題なのだ。
結局、この乳腺外科医師に相談しても術式決断の解決とはならないので、不安の原因の一つである、遺伝性外来受診の提案をうけた。
手術が目前となった段階で遺伝カウンセリング外来受診。 乳腺外科医のマスクした顔から辛うじて見える目には、「今更かよ」という表情。(マイナス思考すぎ?)
またの機会に触れたいが、この病院の臨床遺伝専門医は素晴らしかった。
他の臨床遺伝専門医の診察を受けていないので比較できないが、乳腺外科で打ちのめされたような気持ちの私に寄り添って、「大丈夫」とは言わないが(医療関係者がこういうことは言えない)家族歴に基づくデータで、遺伝性乳がんの可能性の数値を示し、決して0%ではないが、遺伝検査の必要性の低さを私に示してくれた。
同時に、温存手術後の放射線治療における副作用(特に二次がん)の発生率と、放射線治療の有意義性のエビデンス(医学的根拠)を考慮し、放射線治療への不安を軽くしてくれた。
夫はここまで聞いて仕事のため退席。
一人になって、ぽつぽつと不安な気持ちを口に出せるようになった。
夫もどちらかといえば乳腺外科医よりの理論派。悩みに寄り添うのは得意ではない。
結局「絶対」と言い切れることなんてない中で、私の不安に寄り添って、「ちゃんと自分の病気について、調べて考えてる。決断できるはず」と勇気づけてくれた。
ここで私は医師の前で初めて泣いた。
私の選択。正しかったかどうか
結局全て今後の経過次第ではあるが、胸の中で2歳児を抱きしめられる喜びの中に、再発の不安は少しよぎる。
全摘を選択した場合、彼が物心ついた時既に片方しかない胸に喪失感を感じていたかもしれない。全摘だから再発・転移が全くないわけでもなく、不安なのは一緒だ。
再発・転移しても治療しながらポジティブにブログを書いている方もたくさんいる。
もちろん、弱音も吐いていいと思う。
私も治療を振り返りながら、今後のことを考えながらこのブログで不安な気持ちを書くだろう。
いつも明るく、ポジティブだけだなんて、ムリ。
医学も進歩している。今出ている情報の「5年生存率」って、5年以上前に治療を受けた人のもの。
特に、乳腺内科医と治験コーディネーターからは、「治験をしているから、発表されている生存率は当てはまらない」と再発率の具体的な数値は明言されない。
治験結果も、治験参加者の予後を長く見ていく必要がある。
もう、数字を気にしても仕方ない。
今をどう生きるか。ということに尽きるのかもしれない。
おわりに
そもそも、選択肢があることには感謝。初めから全摘しか選択肢がない人もいらっしゃるわけで、その方がこの記事を読まれたら「贅沢な悩みだ!」とお叱りを受けるかもしれない。
個々のステージや治療内容と副作用の出方、その他の持病の有無、家庭環境など様々で、それぞれの悩みがある。
こうして文字にしていくと、その当時がよみがえって手の汗ではなく涙が止まらない。
自分の経験を、人の痛みに寄り添うための想像力にしたい。
【乳腺外科担当医について】
当時の自分を振り返るとこのように考えていたが、完全奏功(pCR)、術後1年の検査で異常なしと結果が出ている今では、いろいろな不安要素に対して選択肢を理論的に提案することは医師の務めで、私は標準的な医療行為を受けたのだと思える。
結果ありきで、今後の経過次第では「もっと信頼できる医師と会いたかった」と思ってしまう場合もあるのかもしれない。
手術後半年以上たって病院で彼女とすれ違ったが、彼女は私に気付かなかった。
最後まで読んでいただき
ありがとうございます。
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自分だけじゃないって、思えます。
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